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2019年9月25日 (水)

その他大勢のものがたり

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 先週末に糸魚川で催された、日本児童文学者協会の「全国大会」的なセミナーでは、卓球をテーマにした小説を多く書かれている吉野万里子さん(「チームふたり」他)と横沢彰さん(「卓球部」シリーズ他)の対談がありました。
 スポーツの物語は、ある意味達成感に共感する小説。だから、達成感のために物語が長くなればなるほど、達成できる目標が大きくなります。運動音痴な子がわずか3年で全国大会を戦うようになったりとか。
 でも、実際のトコロ世の中の多くの子どもたちは、地区大会での一勝を目指していてそれが果たせなかったり、去年は県大会に行けたけど集大成の3年生の大会では地区大会で敗退したりしながら努力しているわけです。でも、彼らに達成感がないかといえばそんなことはまったくなくて「今日はゴールキックをちゃんと高く蹴ることができた」とか、はたまた「ちゃんとサーブが相手のコートに入った」とか、ステップバイステップの小さな目標を達成して「やった!」とやっている。一足跳びにどんどんと上に登っていけるような子は、ほんの一握りですから。

 そういう「ほとんど負けてしまう」多くの子たちにとって、ごく普通の子がいろんな先輩や大人、ライバルと出会ってどんどん勝ち上がっていくインフレ物語は夢を重ねることができる反面、現実感に欠けるという面もあります。連戦連敗、なかなかうまくもならない。そんな子たちに寄り添う「連戦連敗、なかなかうまくならないけれども小さな達成感に満ちた物語」というのが、もっとあってもいいんじゃないかなあ。そんな話しを、児文協の一日目の行事が終わったあとの交歓会で、いろんな方につい力説してしまいました。確かに僕らも「仕事にいっても怒られたりうまくいかなかったりばかりでなかなかイイコトがない小説」を読んで楽しい気分になるかといえばなかなかシンドイところはあるので、こういう普段の現実に寄り添う物語がちゃんとポジティブになるというのは、なかなか難しいということは、想像がつくのですが。

 んで。

 糸魚川セミナーが終わったあと、やりとりさせていただいた作家さんの本をいろいろあらためて読んでいるワタクシですが、その中でなんとなく照れもあって手を出していなかった地元・横沢彰さんの「スウィング!」を遅ればせながら読みました。
 姫川中をモデルにした中学校を舞台に雪が消えてようやくグラウンドが使えるようになる頃からの野球部のものがたり。主人公はそのチームの四番で、一番の飛距離を誇るチーム有数の強打者…なのだけれど、この物語はおおむね、彼がいかにして田んぼと(そしてそれはつまり、根知谷の暮らしそのものと)向き合うかという部分が語られ、野球はその年「やりたいけどなかなかできない」ものとして語られます。
 当然、チームでガッツリ練習していないし、クライマックスで彼らがやらかすコトのせいもあってヘロヘロの状態で初戦に臨むことになります。競技の結果という意味でも、とても芳しくない。

 ただ、そこには「どんどん勝っていけるわけではない子たちのとてつもない達成感」が、しっかりと描かれていました。
 なんだ、あるじゃないか、すごく身近に。

 今年の春頃、「Good old boys」という本多 孝好さんの「すごく弱い少年サッカーチームの親」をテーマにした連作短編集を読んだことを思い出しました。
 結局「連戦連敗、なかなかうまくならないけれども小さな達成感に満ちた物語」というのは、僕ら競技をやっている子どもの親が、子どもたちになんとか遭遇してほしいと願う物語なのだな、と。

 もちろん、勝った方が嬉しいのは間違いないし「負けたっていいよ」と思って臨むのはちがう。でも、結果として勝てないことに親が落胆するようなことなく、競技を通してなにか小さな「あ、そうか」をいくつも見つけてくれれば。そういうことなんだな、と。

 横沢さんの「スウィング!」では、田植えまでの、その年の稲作シーズン序盤に主人公がどう関わるかがガッツリと描かれます。都市部の子に本を手渡すひとたちには「奇をてらった演出」「ありえないこと」と思われるかもしれない。でも、人数比では少なくても、日本の中の「面積比」では少なくない子どもたちにとっては、きっとこの状況は身近な、または想像できる状況なのではないかと、僕は思うのです。

 そんなわけで、今日の写真は敬意を持って、ようやく少しずつ穂に実がはいってきたウチのバケツ稲。稲刈りが進むまわりをよそに、10月末頃の収穫をめざして、がんばって成育中なのです。

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