遠くのひとに住んでいる場所を説明するときには、僕は「新潟に住んでます」と言うことが多い。少し新潟のことをよく知っている人や僕にもう少し興味を持ってくれる人には「糸魚川です」ということもある。でも、さすがに「青海です」とか、さらに狭く「須沢です」「本田浜です」なんて言うことはまずありません。
でも、地域の昔話を採話した本を読むと「須沢の昔話」「田海の昔話」「高畑の昔話」と、公民支館がある範囲ごとの昔話が載っていたりする。昔の人の生活範囲を考えれば、「どこの話」という時の範囲はおのずと狭くなり、今の行動範囲だと逆に広くなる。
だとすれば「日ノ詰」なんて言われても、誰もわかりません。
でも、それがものすごくおいしい日本酒のラベルに書いてある地名だったら…。
写真は、根知男山を醸している渡辺酒造店さんが出荷しているお酒のもの。そして、「日の詰」は、このお酒の原料になった五百万石の特等米がを生産した田んぼがある地域の名前です。この地名範囲は、公民支館エリアより狭い。「このあたり」だけの地名。
もしかしたら、糸魚川のひとでも根知谷以外のひとは知らないひとのほうが多い、そんな土地の名前を「この酒はウマくてね」と世界の人が語ってくれるのだとすれば、それはとんでもなく楽しいことなんじゃないだろうか。
このラベルは、2013年のお米だと、日ノ詰の他に東中のものもあるそうです。つまり、日ノ詰と東中で五百万石の特等米が生産されたということ。お酒の記憶を持つひとが日ノ詰や東中にあこがれ、遠くから、時には海外からも根知谷にやってきて朝は山から、午後からは谷からまっすぐと吹く風に吹かれる。そんな素敵なことも、もしかしたらそのうちあるのかもしれないな、と想像して楽しくなってしまった僕なのでありました。
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