雪、アリマス
ほんのすこしだけ。
それにしても、月曜日の太平洋側から内陸にかけての雪は本当にすごい量で、昨日は仕事先に届く荷物も滞りがち。写真を撮る友人たちも白い写真をたくさん撮ったようで、FacebookやGANREFにもそういった写真が溢れていた感じがします。
さて。
雪が降る中先を急ぐ人たちがなんとか車を出そうとして、あちこちでスタックして交通全体が麻痺していくのを、僕ら雪が降るのがあたりまえな土地の人間は「やれやれ」と思うことも、ないわけではありません。だって、ノーマルタイヤでの雪道なんて、走れても止まれなかったり曲がれなかったりするのはわかりきっていることだし、自分がスタッドレスでもまわりにそんな車がたくさんいたら、いつ自分の車めがけてコントロールできない車が突っ込んでくるかもしれない。転んだ自転車が車の前に滑り出してくるかもしれない。そんな場所では怖くて乗れないから、僕なら絶対にそういう条件では車の運転は諦めますから。
だけど。
それでもなお、みんな車や自転車で出かけていくのを「無謀だ」と言うことはできるのだけれど、一方で「そこまでして出かけなければいけない」こと自体を、大変だなぁとも思ってしまうのです。
日々雪が降らない町で、降雪のためのコストをみんなで負担するのは、無駄なこと。消雪パイプをあっちこっちに配備したり、除雪車を地区ごとに置いたり、首都高速道路に塩化カルシウムを撒いたりして、みんなは降っても降らなくても12月にはスタッドレスタイヤに取り替える。そんなこと、できないですもんね。だったら、降ったときに都市機能が低下することは、受け入れなきゃいけない。それを受け入れないから、麻痺しちゃうわけです。
なぜ、それが受け入れられないのか。それは、以前よりもずっと、社会全体がJIT化してしまったからだと思うのです。
以前なら、あっちこっちに倉庫があったり、ストックがあったりした。その分、在庫は増えて帳簿を圧迫したかもしれないし、新鮮さが不足するのかもしれないけれど、そこから出してくれば、「今日来ない」こと自体には対応できた。
それが、「必要なものを、必要な瞬間に」短いリードタイムで用意することでフレキシビリティを高めるという最適化を、必要以上なところまで進めてしまったから、ちょっとしたショートが大混乱になる。ほんの少し前、3.11直後に大都市はこういうことを痛いほど経験したはずなのだけれど、それでも、もう少し無駄を増やして、その分を"緩衝材"にしようという動きには、なかなかなりません。やっぱり、問題解決装置としてのいろんなものの「生産」や「最終処分」の仕組みを、見えない場所に、大きくて高機能なものとしてつくり、サービスだけ享受するという大都市ならではの方法にどっぷり浸かっているだけに、目の前にあるものを生産して届けるひとや、最後の後始末をするひとたちのことへの想像力がきっと欠如してきているんじゃないか。そんなことを思うのです。
無理なものは無理。そう割り切ることができずに、対価を払っているのだから、サービスがどんなときでも提供されるのが当たり前だと思うというのは、ある種の驕りでもある。
だから、こういうときには「雪で大変だから、スケジュールを考え直そう」とするのも、負担すべきコストの一部なのだと思えるまちになるといいなと、思ってしまいます。
こんなことを考えていたら、ふと20年くらい前のサーバーの高速化技術、TriFlexというチップセットのことを思い出しました。
WindowsNT3.xくらいの時代に、それぞれのトップスピードが長時間維持できない過渡期的なコンピュータのいろんな技術を組み合わせて高速にする
ために、適材適所であっちこっちにバッファを入れ、処理すべきデータが切れてしまうのを防止しようとしたもので、ある意味職人芸的に工夫された「姑息的対
策」なんですが、びっくりするくらい効果があって、Pentium 133MHzとかのサーバがかなり速くNT
Serverを動かすことができたりしました。
今はもっと速いデータ伝送路もCPUもあるので、この方式では今の要求性能を満たすことはできな
いのだけれど、ひとそのものはそんなに進化していないのだもの。まちのためには、あっちこっちに「バッファ」があって、Just In
Timeではない仕組みというほうが、きっとこういうトラブルには強くなるのではないのかな。
ノスタルジアだけでは問題は解決できないから、完全に先祖返りするというのは現実的ではないのだけれど、そうではなく、そういう部分を少し取り戻すだけでもちがうんじゃないか。そんなことを考えた、今回の首都圏ほかの大雪なのです。
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